JOURNAL
The bond between people becomes a piece of clothing
-人と人の結びつきが1着となる-
心が通じているものづくりとは、採算よりも“粋”を優先すること 2022AWのデビュー・コレクションにより、本格始動する日本発のメンズブランド『HUM VENT』。美しいシルエットや質感を表現するため、国内生産=Made in Japanにこだわる。 「この秋冬に発売される〈SOLIS CAVALRY TROUSERS〉の1stサンプルは、以前よりお付き合いがあった石川県の輪島工場に作成していただいたのですが、当初は“量産は難しいかもしれません……”とのお返事をいただきました。しかし、何度も縫製仕様のすり合わせをして実現することができたのです」(プロダクション・末木) その言葉どおり、〈SOLIS CAVALRY TROUSERS〉は能登・輪島工場での生産が可能となった(※詳しくは前編にて)。その工場を有するのは、金沢市内にある創業約70年の老舗縫製会社。そもそも、北陸・金沢の縫製産業の歴史自体も古く、それは実に戦後まで遡る。 「戦後の日本は着るものがあまりない状況で、軍人さんの毛布やコートなどが北陸や金沢の工場で作られるようになりました。その頃はまだ自動車産業もなかったので、縫製産業が日本の生産業を支えていた時代も。 私どもの会社もMade in Japanの縫製技術を駆使し、ニューヨークやロサンゼルスへ製品を輸出するなど、地場産業の一部として事業を続けてきました。その後、中国生産が主流になり地元に複数あった大きな工場もなくなってしまいましたが、今現在も私たちは大量生産ではなくこだわりを持った製品を作ることを大切にしています」(縫製工場・代表) 長年に渡って北陸の縫製産業を支えてきた当社。高い技術力や日本生産に対するプライド、その時代背景によって順応してきた独自のこだわりなど、様々な要素により事業を継続してきたが、70年以上も続けてこられたのは、何より優秀な従業員の活躍があるからだという。 「私自身は会社の代表ではありますが、従業員が率先してアイデアを出したり、毎日のように技術や経験を積み重ねて生産が成り立っています。代表だからといって先頭に立って会社を引っ張っているわけではなく、私自身が従業員のみんなに引っ張ってもらい成り立っているのです。我社は、従業員あっての縫製工場なのです」(縫製工場・代表) そういった人と人が繋がって生まれるものづくりの精神は、内部だけでなく外部との関係性でも同じだという。 当初は量産が難しいと判断したHUM VENTの〈SOLIS CAVALRY TROUSERS〉だったが“プロダクション担当の末木さんのお願いだから何とかしたい”という想いで承諾。そういった想いはHUM VENTのプロダクション担当の末木も同様で、この金沢・輪島の縫製工場でなければ実現しないのではないか、と考えたという。 「素晴らしい技術を持っている工場はたくさんあります。ただ、その中で縫製業は『思考業』でもあるので、作る技術だけではなく、創造したり、想い・考えを、一緒に共有・共感できる関係性が一番大切だと考えているんです。 HUM VENTのアイテムは、デザインから製品へ落とし込む難易度が非常に高いので、お互いの理解がないと仕上がりに影響が出てしまう。ですから、自分の中で顔が思い浮かぶ人=信頼できる人にお願いをしたいんです。...
The bond between people becomes a piece of clothing
-人と人の結びつきが1着となる-
心が通じているものづくりとは、採算よりも“粋”を優先すること 2022AWのデビュー・コレクションにより、本格始動する日本発のメンズブランド『HUM VENT』。美しいシルエットや質感を表現するため、国内生産=Made in Japanにこだわる。 「この秋冬に発売される〈SOLIS CAVALRY TROUSERS〉の1stサンプルは、以前よりお付き合いがあった石川県の輪島工場に作成していただいたのですが、当初は“量産は難しいかもしれません……”とのお返事をいただきました。しかし、何度も縫製仕様のすり合わせをして実現することができたのです」(プロダクション・末木) その言葉どおり、〈SOLIS CAVALRY TROUSERS〉は能登・輪島工場での生産が可能となった(※詳しくは前編にて)。その工場を有するのは、金沢市内にある創業約70年の老舗縫製会社。そもそも、北陸・金沢の縫製産業の歴史自体も古く、それは実に戦後まで遡る。 「戦後の日本は着るものがあまりない状況で、軍人さんの毛布やコートなどが北陸や金沢の工場で作られるようになりました。その頃はまだ自動車産業もなかったので、縫製産業が日本の生産業を支えていた時代も。 私どもの会社もMade in Japanの縫製技術を駆使し、ニューヨークやロサンゼルスへ製品を輸出するなど、地場産業の一部として事業を続けてきました。その後、中国生産が主流になり地元に複数あった大きな工場もなくなってしまいましたが、今現在も私たちは大量生産ではなくこだわりを持った製品を作ることを大切にしています」(縫製工場・代表) 長年に渡って北陸の縫製産業を支えてきた当社。高い技術力や日本生産に対するプライド、その時代背景によって順応してきた独自のこだわりなど、様々な要素により事業を継続してきたが、70年以上も続けてこられたのは、何より優秀な従業員の活躍があるからだという。 「私自身は会社の代表ではありますが、従業員が率先してアイデアを出したり、毎日のように技術や経験を積み重ねて生産が成り立っています。代表だからといって先頭に立って会社を引っ張っているわけではなく、私自身が従業員のみんなに引っ張ってもらい成り立っているのです。我社は、従業員あっての縫製工場なのです」(縫製工場・代表) そういった人と人が繋がって生まれるものづくりの精神は、内部だけでなく外部との関係性でも同じだという。 当初は量産が難しいと判断したHUM VENTの〈SOLIS CAVALRY TROUSERS〉だったが“プロダクション担当の末木さんのお願いだから何とかしたい”という想いで承諾。そういった想いはHUM VENTのプロダクション担当の末木も同様で、この金沢・輪島の縫製工場でなければ実現しないのではないか、と考えたという。 「素晴らしい技術を持っている工場はたくさんあります。ただ、その中で縫製業は『思考業』でもあるので、作る技術だけではなく、創造したり、想い・考えを、一緒に共有・共感できる関係性が一番大切だと考えているんです。 HUM VENTのアイテムは、デザインから製品へ落とし込む難易度が非常に高いので、お互いの理解がないと仕上がりに影響が出てしまう。ですから、自分の中で顔が思い浮かぶ人=信頼できる人にお願いをしたいんです。...
The Heart of Sewing that Dwells in the Japanese Climate -日本の風土が宿る縫製の心-
輪島の人々の想いが形作る純日本産のボトムス 2022AWにデビューを果たした日本発のメンズブランド『HUM VENT』は、《Classic:不変の美しさ》《Inflection:上質と遊び心》《Function:快適な日常》といったコンセプトを主軸とし、高い質感をまとったコレクションを展開する。 ブランドはその高いクオリティを実現するため、国内生産=Made in Japanを徹底している。 日本各地に点在する工場を巡り、アイテムによって適材適所の工場へと生産を依頼。そのひとつが、石川県能登半島の輪島市で、長年に渡り縫製を手がけているとある工場だ。 紺碧の海と深緑の山が隣接する輪島市は、港町と城下町の風情が色濃く残り、世界に誇る漆器として知られる輪島塗や、無形文化財の御陣乗太鼓といった地元の文化を継承する土地だ。 歴史あるこの街で、HUM VENTが2022AWにリリースする〈SOLIS CAVALRY TROUSERS〉が生まれている。 この〈SOLIS CAVALRY TROUSERS〉のシルエットはHUM VENTの基本となる形で、ヴィンテージのトラウザーから型取りし、オリジナルのギャバリー生地で作成されている。サイドに切り替えが無く、横から見てもスパッとした綺麗なシルエットなのが特徴で、美しさを誇るこのボトムは誰が履いても綺麗に着用することが可能だ。 当然、この美しいラインを実製品へ落とし込むためには、実際に縫製するスタッフの視点や卓越した縫製技術が必要となる。 「HUM VENTさんから依頼があった〈SOLIS CAVALRY TROUSERS〉ですが、通常のパンツに比べると非常に複雑だと思いました。ですが、長年の積み上げてきた技術や、それを実作業で実施してくれるスタッフがいるので可能だろうと。私ども輪島工場が誇る、精鋭スタッフが、日々作業にあたってくれています」(縫製会社・代表) 輪島工場で働く十数人のスタッフは、全員が女性で構成されている。縫製に際して、実生産が可能かどうか素材・仕様・パターンを精査する必要があった。 「まずは弊社の代表がHUM VENTの末木さんと長いお付き合いがあり “どうにか実現してあげたい”という想いがある旨を聞きました。ただし、最初にいただいたパターンが特殊な仕様だったため、正直にこのままでは量産は難しく、縫製の観点から実現に近づけるようなアイデアを提案させていただきました。そうしましたら、その提案を汲み取ってくださったのです。私たちスタッフも、一生懸命にものづくりしている方の力になりたい、純粋に良いものを作りたいという想いがありますので、その気持ちは同じなのかなと」(輪島工場・スタッフ)...
The Heart of Sewing that Dwells in the Japanese Climate -日本の風土が宿る縫製の心-
輪島の人々の想いが形作る純日本産のボトムス 2022AWにデビューを果たした日本発のメンズブランド『HUM VENT』は、《Classic:不変の美しさ》《Inflection:上質と遊び心》《Function:快適な日常》といったコンセプトを主軸とし、高い質感をまとったコレクションを展開する。 ブランドはその高いクオリティを実現するため、国内生産=Made in Japanを徹底している。 日本各地に点在する工場を巡り、アイテムによって適材適所の工場へと生産を依頼。そのひとつが、石川県能登半島の輪島市で、長年に渡り縫製を手がけているとある工場だ。 紺碧の海と深緑の山が隣接する輪島市は、港町と城下町の風情が色濃く残り、世界に誇る漆器として知られる輪島塗や、無形文化財の御陣乗太鼓といった地元の文化を継承する土地だ。 歴史あるこの街で、HUM VENTが2022AWにリリースする〈SOLIS CAVALRY TROUSERS〉が生まれている。 この〈SOLIS CAVALRY TROUSERS〉のシルエットはHUM VENTの基本となる形で、ヴィンテージのトラウザーから型取りし、オリジナルのギャバリー生地で作成されている。サイドに切り替えが無く、横から見てもスパッとした綺麗なシルエットなのが特徴で、美しさを誇るこのボトムは誰が履いても綺麗に着用することが可能だ。 当然、この美しいラインを実製品へ落とし込むためには、実際に縫製するスタッフの視点や卓越した縫製技術が必要となる。 「HUM VENTさんから依頼があった〈SOLIS CAVALRY TROUSERS〉ですが、通常のパンツに比べると非常に複雑だと思いました。ですが、長年の積み上げてきた技術や、それを実作業で実施してくれるスタッフがいるので可能だろうと。私ども輪島工場が誇る、精鋭スタッフが、日々作業にあたってくれています」(縫製会社・代表) 輪島工場で働く十数人のスタッフは、全員が女性で構成されている。縫製に際して、実生産が可能かどうか素材・仕様・パターンを精査する必要があった。 「まずは弊社の代表がHUM VENTの末木さんと長いお付き合いがあり “どうにか実現してあげたい”という想いがある旨を聞きました。ただし、最初にいただいたパターンが特殊な仕様だったため、正直にこのままでは量産は難しく、縫製の観点から実現に近づけるようなアイデアを提案させていただきました。そうしましたら、その提案を汲み取ってくださったのです。私たちスタッフも、一生懸命にものづくりしている方の力になりたい、純粋に良いものを作りたいという想いがありますので、その気持ちは同じなのかなと」(輪島工場・スタッフ)...
Materials that touch the senses
-感覚に触れるマテリアル-
しなやかで適度な無骨さで“質感”を表現するオリジナルのテキスタイル群 「HUM VENTの特徴のひとつは、テキスタイルへのこだわりです。そのため、アイテムによっては使用する素材を1から製作しています。着心地の良さだけでなく、視覚や触感においても“高い質感”を感じてもらいたいですから」(ディレクター・櫛部) 日本発のメンズブランドとして、2022AWにデビューするHUM VENT。 ブランドは《Classic:不変の美しさ。古着がまとう不変性と本物だけがもつ魅力。》、《Inflection:上質と遊び心。Classicを踏襲しながらも常識にとらわれない空気感。》《Function:快適な日常。着心地を重視したテキスタイルと先人たちの知恵が生んだClassicな機能美。》といった3つのコンセプトを掲げ、随時コレクションを展開していく。 そのコンセプトを具現化するため、冒頭の言葉にもあったようにテキスタイルを構成するマテリアル選びから徹底的に追求した。 例えば、ブランドのアイコン的な存在の〈NAVIS PEA COAT〉は、カシミヤ混二重織圧縮メルトン(撥水加工)といった、ホワイトカシミヤとタスマニアウールのスーパー原料をブレンド。その生地を高密度接結二重織で織り上げ、縮絨加工のみで強圧縮されたヘビーメルトンをオリジナルで作った。 「通常のメルトンはウールだけで作られることがほとんどですが、〈NAVIS PEA COAT〉はカシミヤをブレンドしたオリジナル生地を製作しました。このウール自体も不純物が少なく希少性の高い、非常に良質な原料を用いているのですが、そこに上質なカシミヤを加えることでウール100%よりも適度な柔軟性が加わり、他のメルトンにはない風合いを生むことができます。そういったバランス感も、ディレクター・櫛部の狙いでした」 (プロダクション・末木) また、秋口に活躍しそうな〈PISCIS FISHERMAN SWEATER〉や〈CORAL SANQUHAR SWEATER〉には、スパニッシュメリノを使用。 これは世界に流通しているウール原料の70%以上を占めるメリノ種の「原種」といわれる希少な羊毛で、クリンプ性が高くゴムのようなキックバックも特徴となる。 「伝統的なメンズセーターといえばブリティッシュニット。 個人的にも好きなのですが、実際に着用すると首まわりがチクチクして着心地が損なわれることも。 なので、テキスタイルの観点からもメンズウエアの概念やうんちくを良い意味で転換させて、着心地や機能性、高い質感を表現していきたいなと」(ディレクター・櫛部) その他にも、風合いを出しやすくするために甘く撚られた一般的なカシミア糸の1.7倍ほどの撚り回数で仕上げられたツイストカシミヤを100%使った〈FUNICULUS CASHEMERE SWEATER〉を筆頭に、〈Twist cashmere...
Materials that touch the senses
-感覚に触れるマテリアル-
しなやかで適度な無骨さで“質感”を表現するオリジナルのテキスタイル群 「HUM VENTの特徴のひとつは、テキスタイルへのこだわりです。そのため、アイテムによっては使用する素材を1から製作しています。着心地の良さだけでなく、視覚や触感においても“高い質感”を感じてもらいたいですから」(ディレクター・櫛部) 日本発のメンズブランドとして、2022AWにデビューするHUM VENT。 ブランドは《Classic:不変の美しさ。古着がまとう不変性と本物だけがもつ魅力。》、《Inflection:上質と遊び心。Classicを踏襲しながらも常識にとらわれない空気感。》《Function:快適な日常。着心地を重視したテキスタイルと先人たちの知恵が生んだClassicな機能美。》といった3つのコンセプトを掲げ、随時コレクションを展開していく。 そのコンセプトを具現化するため、冒頭の言葉にもあったようにテキスタイルを構成するマテリアル選びから徹底的に追求した。 例えば、ブランドのアイコン的な存在の〈NAVIS PEA COAT〉は、カシミヤ混二重織圧縮メルトン(撥水加工)といった、ホワイトカシミヤとタスマニアウールのスーパー原料をブレンド。その生地を高密度接結二重織で織り上げ、縮絨加工のみで強圧縮されたヘビーメルトンをオリジナルで作った。 「通常のメルトンはウールだけで作られることがほとんどですが、〈NAVIS PEA COAT〉はカシミヤをブレンドしたオリジナル生地を製作しました。このウール自体も不純物が少なく希少性の高い、非常に良質な原料を用いているのですが、そこに上質なカシミヤを加えることでウール100%よりも適度な柔軟性が加わり、他のメルトンにはない風合いを生むことができます。そういったバランス感も、ディレクター・櫛部の狙いでした」 (プロダクション・末木) また、秋口に活躍しそうな〈PISCIS FISHERMAN SWEATER〉や〈CORAL SANQUHAR SWEATER〉には、スパニッシュメリノを使用。 これは世界に流通しているウール原料の70%以上を占めるメリノ種の「原種」といわれる希少な羊毛で、クリンプ性が高くゴムのようなキックバックも特徴となる。 「伝統的なメンズセーターといえばブリティッシュニット。 個人的にも好きなのですが、実際に着用すると首まわりがチクチクして着心地が損なわれることも。 なので、テキスタイルの観点からもメンズウエアの概念やうんちくを良い意味で転換させて、着心地や機能性、高い質感を表現していきたいなと」(ディレクター・櫛部) その他にも、風合いを出しやすくするために甘く撚られた一般的なカシミア糸の1.7倍ほどの撚り回数で仕上げられたツイストカシミヤを100%使った〈FUNICULUS CASHEMERE SWEATER〉を筆頭に、〈Twist cashmere...